第2章 中編 生贄の彼女と死の外科医
ユーリは明日の朝また迎えに行くと告げて船から降りようとしたが、ローに止められた。
折角の再会なんだから宴くらい付き合ったらどうだと言ってくるローの本心は分からなかったが、咄嗟に断れなかったのでその場に留まることになった。
そして夜、ハートの海賊団によって宴が開かれユーリは戸惑いながら適当に席につき酒を飲んでいた。
クルー達もユーリがローの知り合いだと分かると、皆興味深々に色々質問してきた。
ユーリを受け入れてくれる雰囲気はありがたいので笑顔で質問に答えていたが、ユーリの内心は穏やかではなかった。
「ねぇねぇこのピアスどう?ローとお揃いの見つけたから思わず買ってみたんだ♪」
目の前で繰り広げられる、ローと知らない女性との会話。
ローに抱きつくようにしてピアスを見せてくる彼女は、燃えるような赤い髪が似合う美女だった。
豊満な身体を押し付けるようにしてる彼女を引きはがすこともなく、何か会話をしているロー。
表情は相変わらず不機嫌だったが、ユーリを動揺させるには十分であった。
「どうしたの?ぼーっとして」
自分が招いた事態なので分かってはいたが、放心状態で酒を飲み続けるユーリ。
そんなユーリをクルー達が心配して声を掛けても、ユーリは曖昧に笑うだけだった。
そしてユーリは彼らを視界に入れないよう、身体をずらしクルー達との会話に専念した。
会話の内容はまったく頭に入らなかったが、あの2人の会話が入ってこないように必死で喋り続けたのだった。
因みに彼女の名前はシェリーだそうだ。