第2章 中編 生贄の彼女と死の外科医
「…っは、おもしれェ。その話、乗ってやるよ」
そして同じように冷えた笑みを浮かべるローも、1年前の面影はどこにもなかった。
二人の間には、もう甘い雰囲気も何もなかった。
ローが話に乗ったのも、ただの気まぐれであり暇つぶしだ。
後は、自暴自棄になっていたのも少しあった。
カイドウとの闘いあたりから体調が悪くなることが多くなり気になっていたが、その理由が1か月前に判明した。
鏡を見た時腰当たりが白く変色しているのを見つけ、思わず鏡を叩き割ってしまった。
思い出したくもない十何年前の記憶が蘇り、その日から寝れない日々が続いた。
珀鉛病は患者がいなくなった為か、未だに治療法が見つかっていない。
コラソンが命懸けで治してくれた病が再び再発したことに、ローの心は荒れていった。
しかしどんなに荒れようが現実が変わるわけでもないので、ここ最近死を受け入れつつあり自暴自棄になっていた。
今更治療方法を探す気になんてなれない。
だから死を目の前にしたローは、ユーリの提案など最早どうでもよかった。