第2章 中編 生贄の彼女と死の外科医
「あぁあ!?キャプテンから離れろこの不審者!!」
そして船員たちが慌てて後を追ってくるが、ローが手で制した。
「………どうも、騒いですいません」
ユーリを見る視線は、予想通り冷ややかなものだった。
ユーリは冷えていく心と流れ落ちる冷や汗に、思わず目をそらし用件を伝えた。
「1年前、ご迷惑をお掛けしたお詫びとして渡したいものがあります」
迷惑と言っていいか分からないが、口実なんて何でもよかった。
ユーリの言葉をローは無言で聞いていた。
「トキトキの能力とオペオペの能力があれば、ワンピースへたどり着けると知ってますよね?その方法が分かったのであなたに渡そうと思います」
ローは昔本で読んだことがあると言っていたが、それは恐らくドフラミンゴの持っていたものだとユーリは推測していた。
予想通り驚くことなく冷たい視線のままユーリを見るローに、これなら少しは信じてくれるかもしれないと期待した。
「はぁ!?そんな嘘みたいな話信じるわけねーだろ!キャプテンさっさとこいつ捕まえたほうがいいですよ!」
ユーリの話は普通の人からしてみれば到底信じれないものだろう。
案の定クルー達は騒ぎだすが、ローが睨みつけ黙らせた。
「……何が目的だ?」
ローから発せられた言葉はユーリを信用したものではなかったが、それでも完全に否定されなかっただけマシだった。
「目的というか迷惑料を払うようなものですよ。そうですね……もし他に理由が欲しいというのなら」
……ただの気まぐれですよ
そう不敵に笑うユーリの姿は、1年前と比べて随分と変わってしまった。