第2章 中編 生贄の彼女と死の外科医
「だーかーら!さっと終わってさっといなくなるんで、さっと会わせてくださいよ!」
「だからそのさっとって何する気だよ!そんな怪しい奴をうちのキャプテンに会わせるわけないだろう!」
「船長に危害は加えません!むしろ彼にとっては良いことだと思います!」
「っは!さてはおまえ売春婦か!?残念ながら船長の相手は間に合ってるんで他をあたってくれ」
「はぁ!?違うし!!ってなんかさり気に私の心にグサッとくる言葉が聞こえたが……とりあえず私が死ぬだけだから大丈夫だって!」
「意味わかんねーよ!!大丈夫っておまえが大丈夫かよ!?」
ローが船の外に出るとクルーと何か争うように聞こえてきた懐かしい声。
最初は空耳かと思っていたが、忘れるはずもない声にローの眉間の皺は更に深く刻まれていった。
「……なぜここにいる」
ローの発した言葉に辺りは一気に静まり返った。
目の前には1年前に別れたまま何も変わっていないユーリが、能力を使って逃げているのが見えた。
そしてローの姿に気づくと一瞬怯えた表情をしたが、すぐに彼の前に現れた。