第1章 前編 時の彼女と死の外科医
ユーリは3日程生死の間を彷徨った。
幸いリゾート地という事もあり医療設備が整っていたので、一命を取り留めることができたが傷は大きかった。
身体の傷というより、心の傷のほうが大きかった彼女は目を覚ますまで時間がかかった。
そしてユーリが目を覚ますと近くにシュライヤがいて、本当に良かったと安心していた。
その後数日は入院が必要なユーリに、シュライヤは退院まで付き添っていた。
ユーリは仲間が待ってるから申し訳ないと断ったが、こんな傷だらけの女を放置して戻ったほうが仲間が怒ると、シュライヤは笑って最後まで付き添ってくれたのだ。
ユーリのせいで死ぬところだったのに、一切責める言葉を言わない彼には、本当に頭が上がらなかった。
「あれ、この荷物…」
ユーリは病室の隅に置いてある荷物に気づき、シュライヤに尋ねた。
どうやらユーリが今日退院するので、ホテルから持ってきてくれたようだった。
そしてユーリは恐る恐るローはどうしていたのか聞いてみると、見事に鉢合わせたと聞いた。
しかし再び争うこともなく、ユーリの荷物を投げ渡すと勝手にしろと言ってさっさと扉を閉められたらしい。
「……そっか」
ユーリは無表情だった。
本当は大声で泣きたいだろうに、ただ耐えている彼女をシュライヤは辛そうな表情で見ていた。