第1章 前編 時の彼女と死の外科医
大きな破壊音と共に、辺りに粉塵が舞い落ちた。
不気味なほどの静まり返ったその場で聞こえるのは、血が滴り落ちる音のみ。
「……っ!?」
鬼哭から流れ落ちる血の持ち主はユーリだった。
シュライヤが死ぬと思った瞬間、とっさに能力を使って庇ったのだ。
ユーリ達の私情に巻き込んだ上死なせるなど絶対にあってはならないと思い、こうするこしかなかった。
ROOMの外からならワープで中に入れるんだなと、ユーリはぼんやりと考えていた。
「おい!?なにしてんだ!?」
そして鬼哭を消して倒れ込むユーリを慌てて支えるシュイライヤ。
ROOMは何時の間にか解除されていた。
辛うじてローが狙いを外したため即死は免れたが、血を吐き出した彼女は、重症だった。
なんとか止血をしようとしているシュライヤに、ローは治療するため一瞬手を伸ばした。
だが…静かにその手を下ろた。
「…そんなに、その男が…大事なのか」
ユーリの手当てをせねばと思う気持ちと、完全なるユーリからの拒絶に乱れる気持ちが入り混じって、ただその場に立ち尽くした。
そしてシュライヤがユーリを抱え上げ病院へ駆け出すその姿が見えなくなった後も、暫くその場に立ち続けたのだった。