第1章 前編 時の彼女と死の外科医
「そうか、そんなに殺されたいか」
ローはROOMを発動した。目の前の男には見覚えがあり、たしか4億の賞金首だったと記憶している。
しかしローからしてみればそんなことは関係ない。
ゆっくり鬼哭を引き抜くと、目の前に男に向けた。
ユーリの婚約者かどうかは知らないが、ユーリはローのものであり、目の前の男を殺して奪うだけだった。
「やめて!」
ローが目の前の男を斬りつけようとした瞬間、ユーリが立ち塞がった。
「…どけ」
ローの殺気をものともせず、まっすぐと見据えてくるユーリ。
その瞳には迷いはなく、あるのは完全な拒絶であった。
そしてその瞳に、ローは昨日のやり取りがフラッシュバックした。
「……っ!」
ローは完全に冷静さを失うと鬼哭を振り下ろした。
それをシュライヤが持っていた剣で受け止めると、ユーリに離れるように言った。
「仮にも好きな女に手を出すとは、本当に彼女を愛していたのか?」
シュライヤはローの攻撃を交わしながら挑発を止めなかった。
シュライヤとて馬鹿ではない。目の前の男が自分より格上だとすぐに気づき、少しでも相手の心をかき乱し隙を作ろうとしたのだ。