第1章 前編 時の彼女と死の外科医
ローがホテルに戻るとユーリの姿が見えないことに、分かってはいたものの怒りを抑えることはできなかった。
荷物等は置いてあったので逃げたわけではないようだが、ローはどうしたものかと部屋の中を暫くウロウロしていた。
そして何時までも落ち着かない心に余計に苛立ってきたので、ローはユーリを探すべくホテルを後にしたのだ。
「……」
しかしローがホテルのロビーから外に出ようとした時、意外と早くユーリと再会することができた。
ユーリもちょうどホテルに戻ってきたようで、ローを見て軽く驚いていた。
「……誰だそいつは」
ローは殺気を隠そうともせずユーリの隣にいるシュライヤに視線を送った。
そんなローにシュライヤは笑みを浮かべると、馴れ馴れしくもユーリの腰に手を回し挑発してきた。
「おまえか?俺の婚約者に付きまとっているという奴は」
「…なんだと?」
シュライヤの言葉を理解できず、ローは眉間のシワを更に深くした。
だがすぐに昨夜の話を思い出し、少し驚いた表情をする。
昨日の今日で婚約者と再開したというのか?
なんとも馬鹿馬鹿しい展開だが、冷静さを失っているローには何が真実なのか判断することができなかった。