第1章 前編 時の彼女と死の外科医
ユーリはとりあえずまだコートは借りていいのだと理解したが、ここで重要な事態に気づいた。
(座ってて気づかなかったけど靴がない!どうしよう、この寒さの中裸足で歩いたら凍傷になりそう。
流石に貸してもらったコートを踏んでいく訳にもいかないし。凍傷になった足をローが診てくれるイベントが発生するなら喜んで凍傷になるが。
いや、ありえないからやっぱりワープで移動するべきか。てか能力を使う痛みと凍傷の痛みなら凍傷の方がマシじゃね?)
ユーリは暫く悩み、凍傷になる道を選んで後を追いかけることにした。
「早くしろ。何してんだ」
しかし一歩足を踏み出そうとしてるユーリの前に、再びローが立っていた。
ユーリが悶々と考えてる間に不審に思って戻って来たのだろうか。
「何もないところから現れたから、移動系の能力が使えると思ったが。なぜ素足のまま歩こうとしている」
最もな意見を言われたユーリは、どう説明していいか迷った。
そしてなんとも歯切れの悪い言い方をしていたのだが、痺れを切らしたローが徐に手を伸ばしてきた。
(え!まさかの抱っこイベントが)
「もういい、シャンブルズ」
次の瞬間ユーリはトロッコの上に乗っていた。
「ですよねー」
ユーリはホッとしたようなガッカリしたようなそんな気分で肩を落とした。