第1章 前編 時の彼女と死の外科医
(なんだこいつは)
ローはユーリが現れた時、敵かと思って一瞬鬼哭を構えた。
しかしいきなり転けるわ、人の心臓をグダグダしながら外そうとするわ、手足が一緒に出てるわで思わずROOMを発動するタイミングを見失った。
いや、それよりももっと気になることがあったのだが…
「…あ、あの、これを」
ユーリはローからの視線を痛いほど感じていたが、今までの酷態からかとても目を合わせることが出来なかった。
そっと顔を反らしながら心臓を返すと、数歩後ずさった。
「えっと…それじゃ、頑張ってください」
ユーリはこれ以上見ないでくれと内心叫び、タイムを解除してその場から逃げ出そうとした。
しかしタイムを解除した瞬間事件は起こった。
「ぐはぁ!?な、なんだこの痛みは!?」
ユーリは突如襲ってきた謎の痛みに、思わずその場に座り込んだ。
(あぁ、ごめんごめん言い忘れてたけど、能力を発生させて完全に解除するとハンデとして強烈な痛みが発生するから。まぁ最強の力なんだからそのくらい我慢しなさいよね!)
どこからともなくそんな声が脳内に響いてきた。
ユーリは涙目になりながら今伝えるとか絶対わざとだろと内心ぼやいた。
そしていつか仕返ししてやると決意した。
(後、時間なくなって渡しそびれたけど、あなた……………何か服を着た方がいいわよ)
「っは?」
ユーリ恐る恐る自分自身を見てみた。
(いやぁぁぁぁぁぁぁ!?)
この身も凍えるような寒さの中。
己の視界に映る、全裸の姿。
ユーリの虚しい心の叫びが、静かに木霊していったのであった。