第3章 小児科医:及川徹
「羽音、何でこんなに飲んでるの?」
羽音を自分の方へ抱き寄せた及川は事情説明を3人に求めた。
「俺らが飲ませたわけじぇねぇぞ」
「勝手に飲んだんだから」
「ところで花ちゃん、大丈夫だったのか?」
及川が烏龍茶に口をつけていると、羽音の手がもう何倍目になるのか分からないカクテルに伸びた。
「もっダメ!うん。落ち着いた。国見ちゃんも頑張ってくれたしね」
「いえ、俺は…」
及川に酒をストップされてしまった羽音は、仕方なしに及川が飲んでいた烏龍茶を貰って満足する。
「だってね、松川さんが及川先生かっこいいっていうから~」
「だから?」
「ちょっとそうかなって思って」
「それで?」
「私の彼氏かっこいいな~って思って」
「うん」
「飲んだ!」
「意味わかんないし…」
呆れ顔の及川は、まだ食べていなかった遅めの夕食を注文し国見と食べた。
酔っている羽音をほどほどに扱いながら仕事の疲れを癒す。
時間も遅くなり、帰り支度を始める頃には羽音はすっかり及川の膝の上で眠っていた。
「ほら、帰るよ」
「…う~ん」
目が開かないままなんとか返事をする羽音。
及川に支えられて彼の車にやっと乗りこむと、後からついてきてくれた岩泉が羽音の鞄を彼の車に放り込む。
「夜更かしすんなよ」
「このまま寝るでしょコレ…」
岩泉の嫌味に呆れ声で答える及川、背後で松川と花巻が笑っている。
「及川先生、ご馳走様でした」
「はいはい、国見ちゃんも気をつけて帰ってね~」
皆に別れを告げて酔っ払い彼女を連れ帰宅した。
「まったく、困った子だね~」
助手席で眠る彼女を横目で見ながらほほ笑む及川の家まではほんの数分。
マンションの駐車場へ車を止めると、羽音を抱きかかえた及川は器用にエレベーターのボタンを押すと自分の部屋へ向かった。
自分のベットに彼女を放り投げホッと胸を撫で下ろす。
「こんなに飲んだの久々じゃない?」
羽音に一つだけキスをするとシャワーを浴びるために浴室へ向かった。