第3章 小児科医:及川徹
「羽音、飲みすぎるなよ」
「うん、大丈夫」
明日は休みだし、美味しすぎるチーズフォンデュがお酒の量を増やしていく。
他愛ない会話をしていたところに及川先生のスマホが震えた。
どうやら病院からの呼び出しのようだ。
「花ちゃんが痙攣起こしたみたい、ちょっと行ってくるね」
及川先生が立ち上がると、自然と国見先生も立ち上がり一緒に病院へ向かっていった。
「ホント、小児科医って大変だよな~」
「俺もそう思う」
「でも、アイツそれがいいんだとよ」
枝豆を口に放りながら3人が及川先生について話を始めていた。
「夜とかもさぁ、内科の先生とか子供見られないとか言ってすぐ小児科の先生呼んでとか言うし」
松川さんがそう言えば、花巻さんもうんうんと強く頷いている。
「クスリの使い方とかも子供だと違うしな」
「お前も大変だな」
岩泉さんは、なんだかんだ言っていつも私たちの事を心配してくれて、及川先生の面倒を見てくれたりもしていた。
岩泉さんは、院内でバレーボールチームを作っているらしく顔も広い。人気もすごくあって頼れる兄さんなのだ。
先日の病院対抗バレーボール大会では優勝をおさめたらしいと及川先生が言っていた。
そんな話も交えながらお酒をどんどん呑み込んでいった私は、いつの間にか岩泉さん達に絡みチーズフォンデュを振り回していたらしい。
「及川に怒られるぞ」
「らいじょ~ぶ~、ふふっ」
「大丈夫じゃねぇだろ、コレ…」
そろそろ手に負えなくなりそうな所へ及川先生と国見先生が戻ってきた。
「えっ?どうしたんですか…」
いつも真面目な私が酔っている姿を見て国見先生が驚いた表情を見せていた所は覚えている。
「まったく…」
呆れた声で私を抱えた及川先生に私はしがみついた。