第3章 小児科医:及川徹
季仙とはここらじゃ有名な、ちょっとお高い居酒屋さんである。自腹ではとても行く気にはなれないが、時々及川先生が連れて行ってくれるのだ。
「やった~!」
「羽音、季仙好きだな」
「だって、あそこのチーズフォンデュすっごく美味しいんだもん」
結局6人で飲みに行くことになり、まだ少し残務のあった国見先生と及川先生を残して4人で先にお店に向かった。
「お前、いつも歩き?」
お店までは徒歩15分程度。
普段は車で通勤しているのであるが、今日は飲みたい気分なので徒歩にして…及川先生の車に便乗を目論んでいた。
「どうせ、及川の家に帰るんだろ」
岩泉さんは結構鋭く核心を突いてくる。
「まぁ及川のマンション広いし、ベッド寝心地いいしな」
「松川さん、及川先生のベッドで寝たことあるんですか?」
飄々と頷く松川さんに驚いた。
「及川と2人で寝てないからね…」
「あたり前です、寝てたら私今どうにかなってます」
冗談交じりの松川さんは、以前及川先生の家に泊まった時の話をしてくれて、そんな話をしている内にあっという間にお店についてしまった。
私以外みんな、この近くに住んでいるので徒歩組なのだ。
及川先生が予約をしておいてくれたらしく、少し広めの個室へ通される。
「チーズフォンデュ!」
「いきなりかよ」
食べたくて仕方なかったチーズフォンデュを注文すると岩泉さんに笑われる。
「いつものことだけどね」
及川先生とこの3人はとても仲が良くて、飲みに行くこともしょっちゅうある、もちろん私も便乗して一緒に行くことは多いのであるが、私のことも一スタッフとして接してくれるのでとても楽しいのだ。
30分くらい経ったところで及川先生と国見先生が合流する。
花巻さんが私たちの関係をばらしたことに対して、及川先生は彼にデコピン一発食らわせただけで天罰とした。
まぁ、困る話でもないですしね…。
国見先生は、どちらかといえば真面目な先生で通っていて及川先生も彼の事を気に入っている。
でもたまに、パソコンの前で居眠りしてるのを見かけるのは秘密にしておこう。