【イケメン戦国】お気に召すまま【修正完了しました】
第6章 ENVY
家康の居室、厩や、弓道場。
何処にも家康が居ないことを一通り確認した私は、城を出て彼の御殿へ向かっていた。
御殿へと渡る、大きな橋。
堀を見下ろしてみると、木の陰になった部分はまだ薄氷が張っている。
今日は最近にしては暖かいな、と感じたけれど、きっと朝晩はすっかり冷え込んでいるのだろう。
気づけば師走も半ば、年末が近い。
クリスマス…は無いし、お正月はやっぱり豪華なのかな?
初詣とか、行くのかな…
いつの時代にあっても、やはり年末年始はそわそわする。
きっと楽しい事が待ってるに違いないのだから、掃除くらいはお手伝いしないと、なんて考える――
ここの門兵さんには、もうばっちり顔を覚えて貰っている。
軽く会釈をすると、ぎぎ、と音を立てて戸が開けられた。
玄関口まで、焦る気持ちを抑えるように、一歩一歩玉砂利を踏み締めて歩く。
そして、玄関まで出てきた女中さんに声をかけ、いつも通り上がり込む、つもりだった。
「千花様!?少々、お待ちくださいませっ…」
バタバタと足早に去っていく女中さん。
あの厳しい家康の御殿で、こんな光景は珍しかった。
すると入れ替わりのように、家老さん…石川さんが顔を出された。
いつも私にも優しい彼は、今日は何故か困ったような表情を浮かべている。
「石川さんこんにちは、あの、家康は…?」
「申し訳ありません、千花様。
殿は戦帰りでお疲れのご様子…
本日は、お引き取り願えますか」