【イケメン戦国】お気に召すまま【修正完了しました】
第6章 ENVY
きゅ、と帯締めをきつく締めてくれたつるさんが、随分と怪訝な表情を浮かべながら、私の様子を伺うように顔を上げた。
「あの、千花様…?
昨日は殿様と、あと秀吉様と…夜をお過ごしになられた?」
「そうですよー、三人で呑みに飲んで飲まれて飲んで!
あ、お着付け、有難うございました!」
これから家康を探して駆け回らなきゃだし、と打掛を羽織らせようとしてくれるのを断って。
つるさんに手を振り、足早に天守を後にしようとしたけれど…寸での所で思い出して、脱がせてくれた小袖の中から伽羅の袋を回収し、袖口に入れ直した。
そしてまたふわり、と立つ香りに、私の気持ちは煽られて行く――その気持ちのまま、今度こそ、と足を踏み出した。
「…それでは、
家康様に要らぬ事をお伝えしてしまったって事だねぇ」
千花が足早に立ち去り、暫くして。
つるが、漸く発した小さな独り言は誰の耳に届くことも無く、零れていったのだった。