【イケメン戦国】お気に召すまま【修正完了しました】
第6章 ENVY
ばたばたと忙しない足音が、段々と遠ざかっていくのを聞きながら、信長は遥か地平の向こうまで見渡せる天守からの景色を眺めていた。
朝の活気溢れる時間は終わり、冬にしては暖かい今日。
弱い冬の陽が差し込む城下では、今日も民達がいつもと変わらない生活を営んでいる。
光秀の報告でも、異常は無かった。
安土は恙無く、今日も平穏であろう――
家康、の名前を出した途端に気色ばんだ、千花の顔を思い出す。
そして背後を見やると、まだ顔の青い秀吉が漸く目覚めようとしているのか、微かに瞼を震わせた。
元々酒に強くないのに、好いた女に呑まれたか――この様な無体を赦しているのも、何処かでその気持ちが分かるからに他ならなかった。
「…だが、男の寝顔など長々と目にする物ではないな。
片腹痛いわ」
こつん、と後ろ頭を軽く足蹴にしてやる。
今度こそ秀吉はゆるり、と目を開け、きょとんとした顔で辺りをぼんやり見渡し――
口端を上げた信長と目が合うと、一瞬でその顔色を更に真っ青に変えたのだった。