【イケメン戦国】お気に召すまま【修正完了しました】
第6章 ENVY
そうしてまた、彼女の事を思っている自分に気付き、苦笑する。
何でもない朝の街並みが美しく思えるのは、見慣れた小道が特別に見えるのは、ふとした風景にも千花を思い出すからに違いなかった。
この道の先、少し行ったところに小さな茶店があって。
そこの茶団子を食べさせた時の千花の顔と言ったら、傑作だった――
彼女の事を思うだけで、ゆるゆると力が抜ける口元をきゅ、と噛み締める。
あともう少しで帰り着く、しかし最後まで気を抜いてはならない。
鐙を踏みしめる足に力を入れ、またスピードを上げる。
平常心で居るつもりでも、はやる心は止められそうに無い。
驚く見張りに門を開けさせ、久方振りの城内に入る。
厩に愛馬を預け、一撫でしてやる。
わかってはいた物の、この時間では誰の出迎えもない。
板間に上がり、がちゃがちゃと音を鳴らして武具を一つ一つ外されていく度、漸く帰ってきたのだと心が軽くなっていく…思いの外、体も心も疲弊していたらしいと気付く。
出された熱い茶を少しずつ啜ると、体の芯から湧き上がる熱ばんだ生を感じる。
――朝も早い、まだ、彼女の姿は見えない。