【イケメン戦国】お気に召すまま【修正完了しました】
第6章 ENVY
ほお、と。吐く息が白く染まった。
朝靄が立ち上る山あいを、馬に乗り駆け抜ける。
「殿、今日は飛ばしますな!」
「寒いし、早く帰りたいからね。
…しっかり、ついてきなよ」
視線を前に戻し、鞭を振るう。
愛馬はそれに応えるよう、短く嘶くと目の前に倒れていた古木を軽々飛び越えた。
夜明けが近いのか、辺りが白んでくる。
小高い丘のような場所に出て開けた視界の先、眼下に隆々と聳え立つ安土城。
荘厳な雰囲気の巨城は、華美すぎて自分の趣味に合わない…と、思っていたが。
あの様に荒れ果てた城跡を見た今となっては、活気に満ち溢れたその姿が愛おしく思えた。
昨日は天候もよく、思いのほか行軍が順調に進み、安土までもう少し、という所で日が沈み一旦は止まったものの。
少し休んだだけで、やはり帰ろう、と気持ちが変わり、こんな朝焼けの中をひた走る羽目になっている。
今日の昼過ぎには帰る、と伝令を送っていたが、この様に早くなるとは予想していないだろう。
いつも帰った時には城門で犬のように尻尾を振って待っている、千花はどんな顔をするだろう――