【イケメン戦国】お気に召すまま【修正完了しました】
第5章 allure
がたがたと、外で吹き荒んでいるらしい北風が木戸を揺らした。
折角温めた部屋が冷えてしまわないよう…
もう直に、千花は秀吉を連れて戻って来るだろう。
寒いさむいと駄々を捏ねられてはたまらない…
信長はほんの少し、外を伺える程度に戸を引いた。
真っ暗な夜空に、尖った月が浮かぶ。
冷えた空気は凛と澄んで、時折冷たい風が吹く。
そう言えば彼女が此処に来てからというもの、風鳴りの音すら耳に入らなかった、と思い当たる。
「腕の中で別の男の名を呼ぶなど、無礼千万」
家康、と。彼女は想像通りの名を呼んだ。
懐柔出来るとも思っていなかったけれど、結果として彼等の後押しをする事になっていたら癪だな――
そうは思いながらも、信長は小さく笑っていた。