【イケメン戦国】お気に召すまま【修正完了しました】
第5章 allure
うまく聞き取れなくて聞き返す、けれど信長様は答えないまま。
軽い身のこなしで立ち上がると、私の腕も引き上げ起こしてくれた。
「千花、酒を持って参れ。
今宵は心行くまで呑み語らう事に決めた、相手をしろ」
「わ、わかりました…」
「猿めも誘ってやれ、喜んで参るに違いない」
「…!
はい!そうしますっ」
お酒を呑む、と聞いて思わず身構えてしまった私に気付いたのか、秀吉さんも誘うよう付け加えてくれる信長様。
やはり思慮に富んでいて、とても優しい。
襟元を少し正して、駆け出す――
前に、当初の目的が置き去りになっているのを漸く思い出した。
「信長様、どうぞ!」
「…金平糖か」
「はい、お酒を呑まれるのなら糖分の摂りすぎになりますから…
三粒までです!」
「…貴様、猿の奴のような無粋事を言うでない」
「ふふ、私、妹分ですから」
信長様が私の手から、薄紙に包んだ金平糖を受け取る。
その手つきは優しく、先程までの荒々しさが嘘の様。
その事に嬉しくなりながら、私は今度こそ、行ってきます、と天守を後にした。
また一つこの時代で生きていく自信がついた、そんな気がして。