【イケメン戦国】お気に召すまま【修正完了しました】
第5章 allure
恋い慕う者への義理を果たしたいのだ、と訴える彼女と、似ても似つかない彼奴の姿が不思議と被って見えた。
彼奴も…市も、そうだったのだろうか。
見合いの席から、祝言の間も、夫となる長政と仲睦まじい様子だった妹を思い出す。
その思いを遂げられたのなら、彼奴の最期は悔いなき物だったろうか――
千花は説教するに足らず、本当にこの心を慰めていったようで。
不思議な程、物思いに沈んでいた筈の気持ちは軽くなっていた。
そして、廊下からバタバタと騒がしい足音が聞こえてくる――
「秀吉さん、急いで下さいっ!
信長様がお待ちですよっ」
「こんな夜半に、その様に音を立てるなよ千花っ」
猿め、お前の声も随分騒がしい――
そう思いながら木戸を閉める。
いつものふにゃふにゃと力無い笑顔とはまた違う、女の顔を思い出す――
この俺を袖にするとは、なんて毒づいてはみるが、その心はやはり軽く、悲しみや悔しさとは程遠い。
やはり不思議で、面白い、底知れぬ女だ。
簡単にはやれぬな――
これから苦労するであろう弟分を思い、信長はまた笑った。