【イケメン戦国】お気に召すまま【修正完了しました】
第5章 allure
「あ、あの、」
何が起こっているか分からない、何を言えばいいのかも分からない。
口をぽかりと空けて、間抜けな顔をしているだろう私に、信長様はにやり、と笑いかける。
「承知の上で、此処に来たのであろう、千花」
いつもより一段と低く、しかし色付いたような艶のある声が耳から、身体中を駆け巡る。
その凄みにあてられたのか、身動きをするのも忘れて、ただその目を見つめ返す。
笑っている信長様は、しかし何処か寂しげに見えて、目が離せない――
そして、ぼんやりとしていた私の両手首はいつの間にか絡め取られ、頭の上で一纏めに押さえつけられている事に気付く。
「…その様に締まりの無い面では、興が削がれる。
慰めてくれるのでは無かったか?」
信長様の顔が突然私の首元に寄せられ、触れた場所からじわり、と痛みが走る。
噛まれた、と察するが早いか、熱い舌が傷んだ肌に這った。
「ふぁっ…!?
信長様、何、やだっ…!!」
やっと我に返り、声を上げる私の肩口で、信長様がくくっとくぐもった笑い声を上げた。