【イケメン戦国】お気に召すまま【修正完了しました】
第5章 allure
お市が大輪の華に例えられるなら、千花は小さな名もない花の様。
いつも傍に居て、心を和ませてくれるような、いつか二人で見た、野原の黄色い花のような。
頼りなくて、暢気で、間抜けで…
でも、芯は強くて、甘いと取れるほど、優しい。
損得勘定なんて抜きにして、自分の本能の部分が、千花を欲しているのだと気付いている。
また強い風が吹いた、心まで、揺さぶられるような。
あぁ、今からでも馬を走らせて、帰ってしまおうか…
もうすぐ落ちてしまいそうな真っ赤な日に、何を馬鹿なことを、と首を振る。
あと一日、二日もすればまたあの暢気な笑顔が見れるのだ。
何を焦る事があるだろうか?
冷えますのでお戻りください、と声をかけてきた家臣に手を振り、彼女の暮らした城跡に背を向ける。
決して千花を、この様な目に合わせる事はしない――
そう、誰にともなく誓う様に、小さく呟いて。