【イケメン戦国】お気に召すまま【修正完了しました】
第4章 roasting
漸く自分の役割を思い出し、元に戻ろうとしたけれど、家康に引き止められ立ち止まる。
家康は徐ろにごそごそと懐を漁ると、包を取り出し、それを開いて見せてくれる。
「わぁっ…綺麗…!」
家康の瞳のような、翡翠の玉がついた簪。
私の後ろに回ると、髪の結目にすっと刺し入れてくれた。
「またあの親父が手を伸ばしてきたら…
この切っ先で刺してやるといい」
「えっ…!?
やだよそんなの、折角くれたから大事にするよ!」
「…なら、もう触られたりしないでよね。
ほら、行くよ」
本気なのか冗談なのか、真顔のままでイマイチ掴めないけれど。
家康と一緒に天幕をまた潜って、外に出る。
ふわり、と吹いた秋風に乗って、私の袖口から漂う伽羅香。
匂い袋以来の贈り物に、ふわふわと沸き立つ心。
髪に手をやると、確かに触る先程までは無かったそれ――思わず笑みを零すと、ふと振り返った家康にばっちりにやけ顔を見られてしまった。
締まりの無い表情を見られてしまった、と狼狽するけれど、家康も私に向けふわり、と微笑む。
それにどぎまぎとする私をよそに、家康はすぐにまた顔を引き締め。
前に向き直り、茶席の天幕を開く。
――そんな不意打ち、駄目だよ。
さっき散々私の振る舞いに、表情にダメ出しした癖に。
赤くなった顔は皆にバレないだろうか、やはりさっきこの思いを告げてしまえば良かった、なんてぐるぐると思いを巡らせながら――
私も家康に続き、茶席へと進む。