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【イケメン戦国】お気に召すまま【修正完了しました】

第1章 incense






「…あの、家康…?」


「…あんた、それ…

考え無しで言ってるなら、ほんとに質が悪い」




はぁ、と大きなため息をついて、頭をくしゃり、とかく家康。
また私は何か仕出かしてしまったのだろうか、と先程までとは裏腹に気分がしゅん、と萎む。


しかしそれにも家康は目敏く気づき、ぴん、と長い指で私の額を弾いた。




「あいたっ…!な、何よ家康っ」
「何だよ、はこっちの言葉…別に、千花を責めてる訳じゃないから。

そんなに気に入ったなら、匂い袋もあるから持って行くといい」


「匂い袋?って?」
「香を入れた小袋。
袂なんかに入れておくと、炊き占めなくても衣から香りが立つ」


「へぇ!ポプリ、みたいなものなのかな?」
「ぽぷり…?」





勿論、この時代にポプリなんて無くて。
私が簡単に説明をするのを、家康は興味深げに聞いている。
自分でも家康に教えられる事があるんだ、と…
得意げになり思わず顔がにやけるのを、止められないまま。




「他にも、香水っていう良い匂いのする液体もあってね。
未来では誰もが手軽に香りを楽しんでいるの」
「…それはいいね、この世では香道は武家や貴族の嗜みでしかないから。
貴賎に関係なく、皆が楽しめる、というのは羨ましい」




家康の表情に、どきり、と胸が高鳴る。
無表情な家康が、たまに見せる柔らかな笑み。
それは、民の事を思う時だったり、皆と他愛もない話で盛り上がる、ほんの一瞬だったりと様々だけれど。


出会った頃は気付けなかった、表情の小さな変化に気付く度、私の胸はじりじりと焦がされていく――



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