【イケメン戦国】お気に召すまま【修正完了しました】
第1章 incense
「あ、あの!ごめんなさい、突然お邪魔して…っ」
「何、突然大きな声出して。
…
別に、邪魔だなんて言ってない」
涼やかな、しかし何処か優しさを帯びた目がこちらを向く。
その目に絆されて、立ち上がろうと力を込めた膝はまた床についた。
そしてまた薫る、懐かしいような、温かい香り。
くん、と鼻を擽って漂うその香りの、記憶を辿りながら考えを巡らせる――
「凄く、良い香りだね」
「伽羅は俺の一番気に入っている香木だから。よく俺の衣からも薫っているでしょ」
「…あ、だから何だかほっとするんだね!私もこの匂い、好きだよ」
この短時間で、すっかりこの香りが好きになっていた私は、家康も好きな香りだと知って思わず微笑む。
そして、嗅ぎ覚えがあったのは、家康がこの香りを纏って居たからなんだ…と。
目を閉じ、すぅ、と軽く息を吸い込むと、胸いっぱいに香りが満ちていく。
暫くそうしてから、目を開け家康を見やると。
彼はぎょっと大きな瞳を見開いて、こちらを見詰めていた。