【イケメン戦国】お気に召すまま【修正完了しました】
第3章 aromatic
どうしよう、と頭を抱える。
残りの茶巾絞りは一つしかない…余り物だと、すぐに悟られるだろう――
俄に泣きそうになる私を見て、家康が盛大なため息をついた。
「千花、そんな事ある訳ないだろ。
三成、急いで湯を沸かせ。
千花は新品の楊枝と盆、茶碗を用意して。
他の人にあげた時と区別をつければ、信長様の機嫌も直るでしょ」
「はい、家康様!」
にこにこと、すぐに火を炊きだす三成くん。
私はと言えば、家康を羨望の眼差しで見つめていた――
流石、長い付き合いなだけあって、信長様の扱いを分かっている!
そうして暫く動きを止めていた私を、家康はちらり、と睨み。ぺしり、と額をはたいた。
「いっ…!!」
「何ボーっとしてんの、千花の為にアイツ…三成も動いてるのに。
ぼさっとしてたら、アンタの代わりに秀吉さんが怒られる一方だよ」
先程までの甘い雰囲気は何処に行ったの、なんて独りごちながら、言われた通りお皿なんかを準備して、茶巾絞りを盛り付ける。
随分とそれらしくなったお盆を持ち、私は信長様の元へ急ぎ向かう。
「家康、三成くんっ、有難うっ!」
「気をつけて、行ってらっしゃいませ」
「途中で転ぶなんて、笑えないから止めてよ」
待っている信長様と秀吉さんのために、その実、随分と上がった熱を冷ますように…
私は少し冷えた廊下を、足早に歩く。
まだ秋は始まったばかりで、きっとまたチャンスは巡ってくるだろう――
そうしたら今度こそ、家康の為に作ったのだと言おう、と心に決めながら。