【イケメン戦国】お気に召すまま【修正完了しました】
第3章 aromatic
ぱたぱたと去っていく千花の足音を聞き、家康は踵を返す。
その背に、三成が話しかけた。
「おや、何処へ?」
「まだ、見回りの片付けが残ってる」
「…そう言えば、家康様。
先程は失礼しました、もっと遅れて到着すれば宜しかったですね」
家康は、じろり、と振り返るなり三成を睨んだ。
にこにこと笑う表情からは、その真意は読み取れない。
「別に、変な気を回さなくていい…
お前も、秀吉さんの所へ行ってやりなよ。
千花が粗相でもしたら、事だろ」
「はい、そう致します!
やはり家康様はお優しい…千花様のみならず、秀吉様の身までお気遣い頂けるとは!」
最後まで三成の言葉を聞くこともなく、家康は厨を後にした。
そして十分に離れた所で、ふぅ、とため息を吐く。
「もう少し、遅くなっていたら…
菓子はとうに無くなって、秀吉さんは信長様に許されなかったかも知れないし、ね」
家康の小さな呟きは誰に聞かれることも無く、秋風に飲まれていった。