【イケメン戦国】お気に召すまま【修正完了しました】
第2章 burn
町外れに野原がある、そう聞いた私は何故だろう、また急かされるように小走りで城下町を駆け抜けていた。
もう夕暮れが迫り、人の少なくなった通り。
たまにすれ違う人が不思議そうに私を見てくるけれど、知った事か。
自分でも正体不明の焦燥に突き動かされて、でも家康に会いさえすれば、こんな訳の分からない気持ちもきっと解けていくのだと薄々感じている。
これが恋だと言うなら、こんな気持ちは生まれて初めてだ――
砂利道が途切れたその先が、ぱっと開けた。
見渡す限り、一面が膝丈ほどの小さな黄色い花で覆われた其処は、この世とは思えない程幻想的だ。
流石に其処を走るのは躊躇われて、息を整えながら静かに歩く。
するとその奥、まるで風景と一体化したように、黄色の着流しを靡かせて佇む後ろ姿を見つけた。
土の上を歩いているから、殆ど足音など立てて居ないのに、気付くのは流石武将、と言ったところか。
そこから何歩か踏み出した辺りで、家康は首だけをこちらに振り返り、私を認め。
物凄く驚いた表情で、こちらに向き直った。
「あんた、何してんの」
「…えと、家康を追いかけて、来ました」
「こんな時間に、こんな所へ?」
「…あー、うん。そう、だね」
先程までの勢いは何処へやら、急にぷしゅっと空気が抜けた様にへこたれる私の受け答え。
曖昧な物言いに、家康は少し苛立った様子で近付いてくる。
手がすっと伸ばされて、思わず目を閉じると。
私の頬を包むように、家康の掌が顔に添えられた。
想像より大きな掌は、とても暖かい――驚きで見開いた目を、気持ちよさに甘えてまた閉じかけた、その時。