【イケメン戦国】お気に召すまま【修正完了しました】
第9章 J'adore
「わ、綺麗…!」
「あんたを探す為に、信長様が命じて焚かせたんだ。
さっきまでは物々しく見えたけど…
確かに、落ち着いて見てみると綺麗かもね」
「私の、為に…」
幻想的な朱色の灯が、薄く張った涙でじわりと滲む。
「元いた世にはね、クリスマス…
冬のお祭りみたいなものがあって。
その時には街中にこんな風に灯が点って、とても綺麗なの」
「それは、美しいだろうね。
もしかして、思い出して帰りたくなった…?」
不安げに後ろから覗き込んでくる、家康の表情に不謹慎にも嬉しくなって、細めた眼から溜まった涙が伝う。
それすら勘違いさせてしまったのか、家康の指が優しく払ってくれたのに、にんまりと笑いを禁じ得ない。
「ううん、それを丁度、今日の昼に思い返してて…
家康と一緒に見れたら、なんて思ってたの」
だから、叶った。
そう言うと漸く、家康も安心したように息をつく。
また前を見据えた、紅く照らされた家康の顔。
美しいな、とついつい見蕩れて、それからはっと気付く──
「あーっ!!!」
「ちょっと、何、いきなり…!」
訝しげに、皆がこちらを伺っているのに気付き、何も無いよと手を振った。
心做しかニヤニヤと皆が元に向き直ったのを確認して、家康をちらり、と振り返る。
「私っ、家康に好きって言うの忘れてる!」
「…はぁ?」
「…あ、今のは無しねっ…!!
生きてまた会えたら必ず言うって決めてたのに…
思いもよらない事続きで、すっかり抜けてた」