【イケメン戦国】お気に召すまま【修正完了しました】
第9章 J'adore
咎めるような秀吉さんの言葉を遮り、頭を下げる。
信長様は暫くこちらを伺うようにじっと見ていたけれど、やがてふ、と笑い、その身を翻した。
「無事なら、それで良い。
貴様ら急ぎ戻るぞ、冬山は冷えて敵わん」
「千花様、つる殿からこちらを預かって参りました!」
「あ、私の羽織っ…!」
「それも着ときなよ、随分冷えるんだから」
「え、だめだよ!家康が風邪引いちゃう、返すね」
「いいから、ほら、その上からかけて」
「お前達、見てられんな」
光秀さんはそう言うと、意地悪そうに笑いながら先を歩いていく。
「千花、家康の言う通りだ。
女子は冷やしたら駄目だろ、借りておけ」
秀吉さんは優しく諭すように、声をかけてくれると。
信長様を追うように、小走りで駆け出した。
「しかし、さみぃな…
宴の準備をしてるんだ、とっとと帰るぞ」
政宗が私の肩をぽん、と叩くと。
先に戻るぞ、と引いていた馬に跨る。
「では、千花様」
三成君が、持っていた羽織を掛けてくれた。
随分もこもこと着膨れた私を揶揄するように薄く笑うと、家康がまた手を引き歩き出す。
そして、少し離れた所に繋いでいた馬に、抱き上げ乗せてくれた。
ゆるゆると動き出す馬は、後ろから家康が支えてくれるからか、いつもの様に怖くはない。
やがて林を出て、山道を下って行くその時。
眼下の町に焚かれた無数の篝火が目に入った。