【イケメン戦国】お気に召すまま【修正完了しました】
第8章 LA ROUE DE LA FORTUNE
「千花様、御手が…!」
「…待って、そうだ、これをっ…!
私、これの価値は正直分からないんだけれど、」
駆け寄ろうとした弟を制して、結った髪を真探り、簪を引き抜く。
飾りと翡翠の石が揺れ、しゃり、と澄んだ音が鳴った。
家康の眼の様な、奥まで透き通る翠の石が、炎の明かりを照り返して光る。
「これを売ったら、きっとお金になるよ!
でも、これは貸すだけ…出来たら、売らないで返して欲しい。
これは、私がこの世で生きていくために必要な、大切な物なの」
いつでも傍にいて護る、と。
そんな想いを込めてくれたのだと信じて、あれからいつも身につけていた簪。
あの時家康は手を刺してやれ、なんて過激な事を言っていたけれど…そんな事をしなくても、あなたの存在がこの身を強くしてくれるのだ、と改めて思う。
ほんの少し、ちゃんと返ってくるだろうかと不安な気持ちを隠すように。
勢い良く簪を差し出すと、兄が少し震える手で、それを受け取った。
「千花様っ…その様な物を、かたじけない…」
「繰り返すけどあげるわけじゃないからね!
貸すだけなんだからね!」
「仰る通りに致します、勝手に売ったりなど致しません…!」
はらはらと涙を零す二人に、貰い泣きしそうになりながら。
この世では、皆が一生懸命生きてるんだな、なんて考える。
武将様達だけじゃない、みんなみんな。
何かしらの覚悟を抱えて、生きている。
元の世では味わえなかった、自分もそうありたい、という焦燥感。
一刻も早く、彼に会いたい──