【イケメン戦国】お気に召すまま【修正完了しました】
第7章 Folie Douce
脇目も振らず、城内を走り抜ける。
どうした事か、と振り返る奴らの目なんて最早気にならない。
広間を出た時、追いかけてきた秀吉さんの言葉が耳に残っていた。
千花がお前の事を語る時の顔、見せてやりたかったよ──
そう言った時の、秀吉さんの表情。
怒りに身を震わした、信長様の姿。
長い事彼等とは共に居るが、どちらも初めて見る姿だった。
彼女が彼等を、そして俺を変えてしまった…
その変化は心地よく。
決して不快では無い、しかしなんだか少しこそばゆい。
危害を加えられていない、とは聞いているが心配で仕方ない。
不安で震えてやいないだろうか、酷い言葉を浴びせられたり、寒くて暗い場所に身を置かれていないだろうか──
「家康様、馬を引いて参りました!」
三成が厩から連れてきた愛馬の鼻をひと撫でし、ふわり、と跨る。
「三成、恩に着る」
少し驚いた表情の三成を尻目に、鞭を奮った。
早く、一刻も早く、千花の顔を見たい。
彼奴の言う事を何だって叶えてやりたいとすら思っている。
甘い感情がぐるり、と身体を一巡りして、力が漲るような感覚に打ち震えた。