【イケメン戦国】お気に召すまま【修正完了しました】
第7章 Folie Douce
「千花は、貴様の元へ向かっていた筈だが」
「…確かに、来たようですが。
俺は一日中御殿の奥に籠っていました。
顔を見てもいない」
「フン、左様か。
何の手掛かりも無い状態で動き回るなど愚の骨頂。
…急いては、事をし損じる」
焦る様子もない信長様に、ふつふつと怒りめいた感情が沸き上がる。
皆が固唾を飲んで俺達のやり取りを見守る中、勢いに任せ立ち上がり、口を開く。
「あんたは、千花のっ…」
言いかけて、やはり、言葉にならず。
二人がどんな仲にあるかなんて、今この場には関係の無い事だ。
そうであるなら探しに行かない、なんてそんな薄情な真似はしない。
ただ、その事実は、この心根を覆う厚い靄。
今、走り出せない原因だった。
千花の事、大事に思っていないんですか。
俺なら、何をおいても、この身に変えても、必ず見つけ出す。
でも、彼奴が待っているのは、俺じゃない──
「貴様、今日はやたらに突っかかって来るが。
何か、俺に言いたい事でもあるのか」
すっ、と、瞼が開き。
紅い目が、こちらをじっと睨むのを、奥歯を噛み締めながら、睨み返す。
少し笑みを湛えたように歪んだ口元をみとめ、更に煽られたように、力の籠る拳に爪が刺さる。