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悲劇のヒロインも悪くない

第4章 警察に囲まれて


ホームの端で銃を持っている人がいる。
それゃそうだ、通報されてもおかしくない。
警察が早々やってきた。
こっちの状況をうかがっている。

男「やっと警察もきたか。明日の新聞は俺が1面かな?」


私は彼の目をじっと見た。

らん「そうですね。あなたの名前を聞いても?」

恐怖はなかった。さっきまで、こんなとこで死ぬのは嫌だと思ってたけど、この人の目を見ていると、それはそれでいいかもしれないと思ってしまう。しかもよく考えれば殺されたって別にそれがどうしたって感じ。また新しい人生が始まるだけ。1度くらい人生を無駄にしたって、次の人生を頑張ればいいだけ。

男「おまえ、俺が怖くないのか?」

らん「怖くないです。むしろ好き」

私は思った通りに言った。この人、案外わたしのタイプだし。見た目だって性格だって。こういう状況じゃなきゃ惚れてたかも。いや?状況とかって意味あんのかな?

男「なっ、なんだよ。」

男の顔が赤くなる。ピュアな人なのかもしれない。この人、可愛すぎる。なんというか守ってあげたい。

男「おまえ、この状況、理解してんのか?」

らん「はい。大体は。あなたは何かしら恨みがあって、私たちを人質にとってるってとこですよね? 恨みの対象は警察かあるいは車掌さん?ってとこですか。」

男「へぇー、わかってんじゃん。」

そりゃね。私は人の心を読むのが得意だから。

らん「あなた、1人で死ぬ気ですか?」

この人が人を殺せるようには思えない。

男「あ? いつだってお前のこと殺せるぜ?」

男は私に銃を向ける。この世の全てに絶望したそんな瞳が私を見る。あぁ、この人の人生、絶望だけで終わってしまうのかな? それは嫌だな。

らん「あなたに殺されるなら別にいいかも」

とんでもないことを言ったのかも知れない。横にいる女性ふたりは目を見開いている。男も例外じゃない。

男「おまえ、大丈夫か?」


心配してくれるんだ。この人、ほんと優しい人なんだな。やっぱこの人に、絶望を抱いたまま死んでほしくないな。



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