第10章 繋がる思い 彼side
あなたのことが好きだから。
涙を拭いながら答えるあいつ。あぁ、まじかよ。俺のために泣いてるのか?
返ってくる答えは予想がついたが、もう一度聞いてしまった。俺のことが好きなのかって。
すき。
そんな目で見つめんなよ。おまえのその言葉を聞いて俺の気持ちは定まった。俺もこいつが好きだ。
ぎゅっと手を握られた。
小さくてすごく冷たい手。あぁ、守ってやりたい。だけど、俺はこいつを守れない。
あいつは自分の名前を名乗り俺の名を問う。
らんって名前が、とても特別に聞こえる。
らん、何度も心の中でつぶやく。
そしてらんが、俺の名をよぶ。あの日から、俺の心から消えていたものがスーっと温まっていく。
俺は許されないことだと分かりつつ、らんを抱きしめた。