Vergiss nicht zu lacheln―進撃の巨人
第7章 恋慕
エーベルは上流階級の貴族の御子息。
エミリは一般家庭に生まれ、調査兵としての道を歩んでいる。
身分も、生き方も、生きる場所も……何もかもが違いすぎる。
「彼と話している時のエミリは可愛かったよ〜顔を真っ赤にしててさっ!」
「あはは……」
どうして彼に恋をしてしまったのだろう。
何故、自分にとって兄のような……そんな存在にならなかったのだろう。
(ああ、前もそうだったなあ……)
苦い思い出が脳裏にちらつき、エミリの心を締め付ける。
「で? エミリはどうして彼のことを好きになったの?」
「えぇ!? そ、それは……」
突然の質問にエミリは再び戸惑う。
今日は朝からハンジにからかわれてばかりな気がする。どうにかしてこの話題を逸らす術はないのか、必死に考えてみるが出てこない。
ハンジは興味津々といった様子で微笑んでいる。逃げられない。
「と、特に理由は……」
「ああ! 今嘘ついたね!」
「ついてません……本当に何もないです」
「いいや、ウソ! だって耳が赤いよ?」
その言葉にエミリはギョッとする。
何故ハンジがエミリの癖を知っているのか。
確かにさっき、エーベルとも同じようなやり取りをしたが、近くにハンジ達はいなかった。なら、"いつ"それを知ったのだろう。
「ハンジさん、なんで……」
「フィデリオから聞いたんだよ!」
出てきた幼馴染の名前にエミリは口元を引き攣らせる。
(アイツ……帰ったら覚えてろよ!!)
なんてことをしてくれたんだと拳を作る。
耳が赤くなる癖は自分にとって弱点のようなもの。隠し事や嘘をつきたくても身動きがとれなくなるからだ。
エミリは目を泳がす。
ハンジの暴走は止まらない。
「ま、そんなことはどうだっていいから、理由をっ」
「うるせぇぞクソメガネ」
そこへリヴァイがハンジの言葉を遮った。
降参して話そうと思っていたエミリは驚いて顔を上げる。
「えぇ!! だってリヴァイも気にならないの!?」
「俺は興味ねぇ。が、聞かれたくない事だってあるだろうが」
「!」
リヴァイに諭され、ようやくハンジは静かになった。エミリはホッとしたと同時にリヴァイに感謝する。