Vergiss nicht zu lacheln―進撃の巨人
第7章 恋慕
「あ〜えっと……流石に無神経だったね。ごめんね、エミリ」
「い、いえ! 気になさらないで下さい!!」
「ハンジの無神経は元からだろう。今に始まった事ではない」
「ちょっと!! エルヴィンってばヒドいなあ!」
二人の会話を聞きながら、エミリはそっとリヴァイを盗み見る。リヴァイはまた窓の外を眺めていた。
一見、エミリの話には興味なさげだが、本当にそうであれば、聞かれたくないことだってあるだろう、なんて言わない。
(兵長はきっと……どこかで気づいてたんだろうな……)
エミリが自分の恋について干渉してほしく無いということも、この恋を諦めようとしていることも。
だから、気づいていたから、聞かれたくないことだと判断した。
(また、お礼を言わなきゃ)
何だかリヴァイに助けられてばかりのような気がして、自分が情けなかった。
宿に到着し、エルヴィンとリヴァイ、ハンジとエミリとで部屋に別れる。
夕食の前に入浴を終えたエミリは、少し散歩をしようと宿の外を歩いていた。
王都の宿だけに、庭にはたくさんの花壇と大きな噴水が一つ建っていた。
自然の香りが風に流れエミリの鼻を擽る。そんな中で花壇に咲く花を眺めていると、とても心が落ち着いた。
「ふふ、綺麗……」
小さい頃から花が、植物が大好きだった。
薬学に興味を持った理由もそこにある。
こんなにも美しい草花が、人の命を救うために大きな役割を果たしている。それを知った時、自分の世界が広がったような気がした。
それと同時に、壁の外にも興味を持った。
もしかしたらあの壁の向こう側に、知らない草花が存在しているのだろうと。実は、エミリが調査兵団に入った切っ掛けは、エレンのことだけでなくそれでもある。
もっと多くの植物に触れたい。見てみたい。
だから、訓練兵になった時から調査兵団以外は入らないと決めていた。
(…………そろそろ、私もケリをつけなくちゃ)
自分の気持ちと、ちゃんと向き合わなければならない。
そうでないと、もしかしたらいつか……迷ってしまうかもしれない。
そう危惧してしまう程、恋とは恐ろしいものであるということを……エミリは知っているから。
恋という花は、そう───
麻薬。