Vergiss nicht zu lacheln―進撃の巨人
第7章 恋慕
「エーベル!!」
一通りの会談が終わり、エミリはエーベルの元へ駆け寄る。
早く彼の傍に行きたくて、会談中はそわそわして落ち着かなかった。
「エミリ、久しぶりだね。元気そうで良かったよ」
ポンポンとエミリの頭を優しく撫でるエーベルを見上げ、『うん』と元気良く頷く。
よく、人に頭を撫でてもらうことのあるエミリだが、やはり好きな相手からのそれは他と違った心地良さがあった。
「もうあれから三年経ったんだなあ」
「そうだよ! 私も兵士……っていっても、まだ新兵だけどね」
二人で屋敷の庭を散歩し、お互いの三年間について話をする。
エミリの話題はもちろん、訓練兵団での出来事と調査兵団に入ってからのことだ。
エーベルと話をするのは楽しくて、幸せで、そしてたくさん話を聞いて欲しくて、次から次へ色々な話を持ち出す。
「それでね、調査兵団に入って、ペトラっていう女の子とお友達になれたの!!」
「そっか! エミリは女の子の友達少なかったから心配だったけど、ちゃんと出来たみたいで良かったよ」
「も、もう! 私、別に全く友達がいないわけじゃないんだから……」
意地になってそう言い返すが、心当たりがありすぎて段々声が小さくなる。そんなエミリの様子に、エーベルはクスリと上品に笑いを零し、エミリの耳に触れた。
「耳が赤い、強がってる証拠だね」
「っ!!」
エミリの顔が真っ赤に染まる。
楽しそうなエーベルの笑顔が素敵で、強がると耳が赤くなる癖を覚えていてくれたことが嬉しくて、そして自分に触れてくれたことに幸せを感じた。
ドクドクと心臓の音が耳に届く。これはエミリのものだ。
(……このまま、時間が止まればいいのになあ……)
"好き"の感情で溢れた胸を抑え、エミリゆっくりと深呼吸をした。