Vergiss nicht zu lacheln―進撃の巨人
第7章 恋慕
リヴァイとハンジの紹介も終え、エミリ達はウルリヒに連れられ屋敷の中を案内される。
赤絨毯と明らかに高そうな花瓶。大きな肖像画が幾つも廊下の壁に並んでいる。改めてホフマン家の家柄の良さが伺える。
長い廊下を歩き続け、ある大きな扉の前で立ち止まる。
清潔感のある真っ白な扉。この部屋が談話室らしい。
「旦那様、調査兵団の皆様をお連れ致しました」
ウルリヒが扉の向こう側にいるであろうホフマン家の家長へ声を掛ける。
扉が開かれ、ホフマン家の使用人として雇われているウルリヒの部下が顔を出した。
執事長であるウルリヒとエルヴィン達の姿を確認し、『どうぞ』と中へ招き入れる。
ウルリヒに続いてエルヴィンから順に部屋の中へ足を踏み入れる。そこには、この家の主がソファへ腰掛けていた。
「やあ、朝早くからすまないねぇ。私はマンフレート・ホフマンという者だ」
「調査兵団団長、エルヴィン・スミスです。本日はお招き頂き有難うございます。よろしお願い致します」
「こちらこそ、エミリちゃんを連れて来てくれてありがとう。久しぶりだね、エミリちゃん」
一通りの挨拶を済ませたマンフレートは、ハンジの斜め後ろに立つエミリに顔を向け、ニコリと微笑む。
「はい、お久しぶりです!」
「元気そうで安心したよ。段々、お母さんに似てっ……ああ、すまない」
エミリに、以前グリシャを通して会ったことのあるカルラを重ね、ついつい母親の話を持ち出してしまったマンフレートは、申し訳なさそうに眉を下げ謝る。どうやらあの日の出来事を知っているようだ。
「いえいえ、気になさらないで下さい」
「……気を使わせてしまって悪いね。イェーガー先生のことも聞いている。行方不明だと……」
「はい。ですが、生きている確率の方が低いそうです……」
「そうか……」
あの日の惨劇から約二年半経っても、グリシャの身元はハッキリとしないままだった。もう死んでいると思っていた方がいいのかもしれない。