Vergiss nicht zu lacheln―進撃の巨人
第7章 恋慕
数十分の間馬車に揺られホフマン家へ到着した。御者が車両の扉を開け、乗り込んだ時と同じ順に馬車から降りる。
狭い空間から外へ出たエミリは大きく伸びをし屋敷を見上げる。
この屋敷を見るのも久し振りだ。全然変わっていない外装に、少しだけ安堵した。
屋敷の大きな玄関は開け放たれ、使用人達が両脇にズラリと並んでいた。思っていた以上に歓迎されているようだ。
「ここからは使用人が部屋へ案内致しますので、私はこれで」
深く礼をした御者は、そのまま馬車を直しに行ってしまった。
使用人。知っている方だろうか。
ホフマン家へ訪れた時は、いつも使用人の者達にも世話になっていた。美味しいお茶とお菓子をいつも用意して待ってくれていたことを思い出す。
「ようこそおいで下さいました」
屋敷の中から、執事服を身にまとった一人の男性がエルヴィンの前に立ち、美しい立ち振る舞いで優雅にお辞儀をして見せる。
聞き覚えのある声に、エミリはハンジの後ろからひょっこりと顔を出して姿を確認した。
「あ、ウルリヒさん!! お久しぶりです!!」
「エミリさん、お久しぶりです。大きくなられましたね」
「もう三年以上も経っていますから」
最後に会ったのはエミリが訓練兵団へ入団する少し前だ。
三年も経てば幼さも幾分か無くなり、見た目も大人びたものへ成長する。それに加え、兵服を着ていると兵士としての強さと逞しさも現れるというもの。
「あ、紹介しますね!! こちら、ホフマン家の執事長のウルリヒさんです」
そしてエミリは、ウルリヒと初対面であるエルヴィン達に彼の紹介をする。
ウルリヒはエルヴィンの前へ立ち、手を差し出す。握手の合図だ。
「執事長を務めております。ウルリヒと申します」
「エルヴィン・スミスです。本日はお招き頂きありがとうございます」
ウルリヒの手を握り返したエルヴィンも自己紹介をする。
いつもは貴族の相手をするのにあまり気乗りでは無いエルヴィンだが、今日は違った。
これまで相手をしてきた貴族は皆、調査兵団を見下す様な言動が多々あった。いつも嫌味を飛ばす貴族相手に気を張っていたエルヴィンだが、今回の相手は、自分の部下であるエミリと懇意にしている者達だ。
そのせいか、とても気分が良かった。