Vergiss nicht zu lacheln―進撃の巨人
第7章 恋慕
「前から知り合いだったようだけど、やっぱり会うのは楽しみ?」
「はい! もちろんです!!」
「そっか!」
もし、エミリが憲兵団に入っていたら、会う機会はいくらでもあっただろう。毎日でなくても、週に何度か屋敷に顔を出したいと思うくらいの理由がエミリにはある。
けど、それでも……憲兵になろうと思ったことは一度も無かった。迷うことなく調査兵になることを選んだ。だから、もう二度と会えない覚悟はしていた。いつ死ぬかわからない、それが調査兵だから。
だから嬉しかった。調査兵になった今、再び"彼"に会えることが……。
「エミリ〜なんか楽しそうだねぇ」
「え」
ハンジに突然そんなことを言われ、エミリは動揺する。
まさか顔に出ていたのだろうか。思わず頬を抑える。
「あはは、可愛いなぁ!」
「ハンジさん!?」
「ハンジ、あまりいじめてやるな。困っているだろう」
ハンジとエルヴィンの言葉にエミリは顔を真っ赤にして俯く。
エミリは、隠し事が苦手な性格だ。それなのにいつも強がってしまう。でも、それもすぐにバレてしまう。
それは、嘘をつくのが下手ということもあるが、それだけでは無い。強がるといつも耳が赤くなってしまうからだ。
(……うぅ、何かあるって絶対思われた)
恥ずかしくて穴があったら入りたい。そんな気持ちだった。
そんなやり取りのお陰か、少し場の空気が和む。しかし、この中に一人だけ発言していない者がいた。
「…………」
エミリの目の前に座っているリヴァイだ。
リヴァイは視線をこちらに向けるどころか、ずっと窓の外へ向けたままだった。
あの壁外調査の夜から、エミリとリヴァイの間には何も無かった。話すことも無ければ会うことも無い。たまにリヴァイを見かけるくらいだった。
あの時、一緒に執務室で紅茶を飲み話をしたことが、今となってはまるで夢のようだ。
でも、これが普通なのだろう。
リヴァイは兵士長で、エミリは新兵。会話が出来るだけでも凄いことだ。
(でも、せっかくだから……また、お喋りしてみたいな……)
リヴァイの横顔をそっと見ながら、そんなことを思っていた。