Vergiss nicht zu lacheln―進撃の巨人
第7章 恋慕
「……はぁ」
緊張が解け、深く溜息を吐く。
突然のホフマン家からの招待には驚いた。それこそ予想もしていなかった事だが、一つ楽しみが増えた。
「エミリ! よくやってくれたよ!!」
「うわぁ!? ちょ、ハンジさん?!」
いきなりハンジに抱き着かれ、エミリは体制を崩す。
「ハンジさん、別に私何もやってないですよ……?」
「でも、エミリが居てくれなかったらこんな美味しい話、舞い降りて来なかったよっ!!」
ホフマン家と繋がりがあったのは、父であるグリシャのお陰だ。
グリシャが医者でなかったら、カルラと結婚していなかったら無かった話かもしれない。
エミリは、尊敬する父の隣にいたくて着いて来ていただけ。それでも──
(少しは、兵団の役に立てたって思ってもいいのかな……?)
自分はまだまだ新兵で、特に優れた戦闘力を持っている訳でもない。だからこそ、こんな形でも調査兵団の力になれたことが嬉しかった。
「さあ、巨人捕獲に向けて一緒に話し合おうじゃないか!!」
「えぇ!?」
いつも以上に暴走し始めるハンジにまたもや引きずられ、今度は研究室へ連行された。
「───そんなわけで、私はある仮説を立ててみたんだ!! まず巨人は……」
終わりの見えないハンジの巨人話。
これまでも何度かそれに付き合わされて来たエミリは、空腹と寝不足で苦労したことはあったが、でも嬉しそうに話をするハンジを見ていると、今日は不思議と疲れなど感じなかった。
(たまには……いいかな?)
いつもお世話になっているし、壁外でも守ってもらっている。
話を聞くだけで日頃の感謝を返せるとは思っていないが、きっとハンジなら巨人の話を誰かに聞いてもらえるだけで嬉しいのだろう。
今日はハンジの話に付き合う。それが本日の予定となったが、結局ハンジの話は明け方まで続き、再び空腹と寝不足に見舞われたエミリは訓練を休むことになったのであった。