Vergiss nicht zu lacheln―進撃の巨人
第7章 恋慕
「なるほど……手紙の内容から推察するに、あちらもかなり君に入れ込んでいるようだ」
仕事で私情を挟むようなことは御法度だが、それでもホフマン家はエミリに会いたいと、わざわざ手紙に記しこうして送って来た。余程深い仲でなければ有り得ないことだ。
「三日後、リヴァイとホフマン家の屋敷へ挨拶に伺う予定だ。エミリ、君も来てくれると助かるんだが……」
兵団としてはこんなにも大きなチャンスを逃す訳には行かない。
なるべくあちらの要求を聞き入れ、円滑に物事を進めていかなければ。
これまで、無理な取引を持ち掛けてくる貴族はいたが、今回のような条件であれば何も悩まなくて済む。ある意味、兵団にはメリットしか無いと言っていい程だ。
「私に出来ることがあるのであれば……是非、ご一緒させて頂きます!!」
エミリも断る理由など無い。
訓練兵団に入団してからはそちらの方で忙しく、グリシャの行方不明もきっかけで、ホフマン家と会う機会も無かった。
最後に会ってから、もう三年以上も経つ。それなのに、まだ自分のことを覚えてくれていた。会いたいと思ってくれた。こんなにも嬉しいことは無い。
「決まりだな。ハンジ、お前も来い。あちらからの要望とはいえ、エミリはまだ新兵だ。彼女の上官として付き添ってもらう」
「了解だよ、エルヴィン」
そこでエミリは、ハンジの機嫌が良かった理由が分かった。
今回、ホフマン家からの援助があれば、念願の巨人捕獲が可能となるかもしれないからだ。それも、ハンジの捕獲方法の案次第だが、どちらにせよ美味しい話に変わりはない。
「三日後、ホフマン家の使いの者が馬車で屋敷まで運んでくれるそうだ。その日は王都の宿に泊まる予定となっているから、一泊分の荷物を準備しておいてくれ。変更があれば随時報告する。以上だ」
一通りの話が終わり、エミリはエルヴィンに敬礼をしてから、ハンジと団長室を後にした。