Vergiss nicht zu lacheln―進撃の巨人
第6章 答え
「……」
「……あ、なんか長々とすみません」
何も話さないリヴァイに、エミリは再び謝る。
リヴァイは驚いていた。
周りとは違ったその考えは、目の前の少女が15歳かと疑うほど大人びたものだったから。
エミリの言動はまだまだ年相応の子供っぽさがあるが、心持ちは誰にも負けない程強い。
彼女のあの考えは、きっと何があっても曲がることは無いのだろう。
「兵長?」
反応を示さないリヴァイにエミリは焦り始める。
流石に調子に乗り過ぎたことを言ってしまったのだろうか。また心臓がバクバクと動きはじめる。
しかし、彼が示した反応はエミリが予想もしていなかったものだった。
「……お前ほどクソ真面目な女は初めてだ」
「え」
リヴァイの言葉にも驚いたがそれ以上に、彼の表情にエミリは目を丸くした。
(……兵長が、笑ってる)
神経質で粗暴で、いつも無表情なリヴァイには近づき難い雰囲気があった。笑ったりするのかと同期の間でも何度か話題になったことはあり、エミリも彼はちゃんと笑う人なのかと疑っていたこともあった。
(兵長って、こんな風に笑うんだ……)
表情はいつもと比べて柔らかく、口角を上げフッと微笑むリヴァイがあまりにも素敵で、エミリは暫く目が離せなかった。
「……と、ところで兵長、あの……私って真面目なんですか?」
リヴァイに見惚れていることに気づいたエミリは、だんだん恥ずかしくなり話題を変える。
リヴァイの言う『クソ真面目』は勿論褒め言葉だ。
エミリはこれまでも自分の考えや想いをしっかりと持ち、それに従って生きてきた。自分にとっては普通なことが、周りからしたらそうではないのだろうか。新たな疑問が生まれる。
「決めたことを簡単に曲げないような奴は、大体真面目な奴が多いだろう」
「……そう、なんですか?」
「母親の教えを最後まで貫き通そうとしてるとことかな」
「……ん〜」
それって真面目、なのかな?
兵長が言うからそうなのかな。
え、でもやっぱり私にはよく分からない。
分からないのは自分がまだ、子供だからだろうか。