Vergiss nicht zu lacheln―進撃の巨人
第6章 答え
難しい顔をしながら考え込むエミリを見ながら、リヴァイは物思いに耽る。
これまでリヴァイの周りに集まって来た女は大体、彼の容姿目当てが大半だった。特に貴族の女から注目を得やすいが、正直リヴァイからすると面倒で仕方が無い。
甘ったるい猫なで声と上目遣い、そして強すぎる香水の匂いには耐えられない。
兵団でも彼に憧れと恋愛感情から告白する者も多いが、リヴァイは特定の女を作らないようにしている。作ろうと思ったことすら一度も無い。欲が満たされればそれで良かった。
勿論、条件はある。
まず第一に清潔であること。潔癖症のリヴァイからすれば絶対にこれは外せない。
そして第二に後腐れの無い女だ。関係を持つのは誰であろうと一度だけと決めている。ズルズルと引きずるのも、引きずられるのも嫌いだからだ。
とにかく、女は欲を満たす道具としか思っていない。冷たい奴なのは重々承知。けれどそれはリヴァイだけに限ることではない。開き直っている部分もあった。
そんな事を長年続けてきたせいか、これまでの生活環境もあるのだろうが、女に情など湧くことは無かった。
エミリのような裏表の無い真っ直ぐな女と出会ったのは初めてだった。だからだろうか、初めて話をした時から妙に気にかけていたのは──
「それにしても兵長、よく喋りますね」
「馬鹿言え。俺は元々結構喋る」
意外な兵士長の一面にエミリは楽しそうに微笑む。もしかしたら、こうしたリヴァイの顔を知っている人は案外少ないのかもしれない。
せっかく調査兵団に入ったのだから、色々な人達と関わって行きたい。それはいつか自分を大きく成長させてくれることに繋がると思うから。
(兵長とも、少しは仲良くなれたのかな)
それはエミリの純粋な気持ちだった。一人の兵士として戦うリヴァイの姿。それに憧れていたのはどうやら自分も同じのようだ。
「兵長! 私、頑張りますから!」
元気な声を上げるエミリに、リヴァイは窓の外から彼女へ視線を移す。
彼女の顔にはもう、悲しみが表れていなかった。吹っ切れたのか、とてもスッキリした顔をしていて、そこから彼女の直向きさを感じた。
「……そうか」
やはりエミリの笑顔は眩しくて、リヴァイは視線を窓の外へ戻した。
日は既に空へ昇り初めており、光が執務室に差し込んでいた。