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Vergiss nicht zu lacheln―進撃の巨人

第6章 答え



そこで、ようやく繋がった。
あの通過儀礼の時に答えたものが、いま、やっと……


「……私、父が医者だったので、割とこれまでにも"人の死"を目の当たりにする機会がたくさんありました」


人の死。
その中の多くが病気で亡くなった人達だった。
幼い頃、その光景を何度も間近で見ていたエミリは、"死"というものが怖くて仕方が無かった。
だけど、一つだけ不思議だったことがある。


「病気で苦しんでいる人達を見ると……私は、それだけで呼吸をするのも辛かった。だったら本人はもっと辛いはずなのに、みんな、死に際に笑っているんです」


その場に立ち会っている医師や家族、友人……消えゆく命に涙している中、ベッドで粗い呼吸を続けながらも、微笑んでいたのだ。その記憶が、いまも鮮明に残っている。


「それは、"幸せ"だったから」


ある一人の患者が、幼いエミリに言った言葉。
『どんなに病気が辛いものでも、最後は笑っていられればそれでいい』

その時は分からなかった言葉も、今となれば理解できる。


「自分の隣に誰かがいてくれる。それが何よりも素敵で、幸せなことだと教えられました」


それは、大切な人が笑顔でいてくれると自分も幸せになれるという、カルラの教えと同じこと。


「私も、傍にいることで誰かの支えになりたい。そのために、自分が出来ることを見つけたいと思ったんです」


命を落とした兵士達の……仲間の死を無駄にするわけにはいかない。意志を引き継いで行くことも大切だ。だが、それだけではないと思っている。

大切なのは、その人達が"存在していた"こと、"幸せでいた"ことを忘れないでいること。
残った者達がそれを忘れないでいる。それだけで、この世に肉体はなくともその人達が存在していた証になる。

そしてそれは、誰かと幸せを分かち合った証にもなる。

少なくともそれだけで、"幸せ"だったという事実があるだけで、人は救われるとエミリは考えた。


「……私達は、いつ死ぬか分からない。でも、だからこそ、最期は笑えるように幸せを分かち合いたい、幸せにしたい、そう思うんです」


今はまだ、自分に何が出来るか分からないけれど、見つけて行こう。
少しずつ、私の出来ることを……

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