Vergiss nicht zu lacheln―進撃の巨人
第6章 答え
「……なんか、情けない所を見せてしまい申し訳ありません」
「あ? 何故謝る」
「何故って……」
勝手に兵舎を抜け出したせいでリヴァイに迷惑をかけ、挙句こうして今は執務室で世話になってしまっている。
それを踏まえての謝罪でもあったが、リヴァイはそんなこと気にしてはいない。
「別に怒ってねぇよ」
「そうなんですか……?」
「ただ、珍しいと思っただけだ」
「え」
リヴァイから発せられた意外な言葉に、思わず紅茶を飲む手を止める。
(珍しい? 何が?)
考えが読めず、エミリは疑問符を浮かべる。
特に変わったことはしていないはずだが、リヴァイにとってあれのどこか珍しかったのだろう。
目の前に座るリヴァイをぼーっと見つめる。
「お前のように切り替えが早ぇ奴はあまりいないからな」
「切り替え、ですか……そうでもないですよ。今でも悲しいし、辛いですから」
どれだけ前向きに生きようと思っても、それがすぐに出来るのであればこの世に悲しみや苦しみは存在していない。人間は、とても不器用な生き物だから。
感情があり、様々な個性や考えがあり、そうして人は巡り合っていく。
だからこそ、人それぞれ。
出会いも別れも決して同じものは無い。嬉しいものもあれば、悲しいものもある。
そして、エミリ達の言う出会いと別れというものは、生と死。
生き延びることで、戦い続けなければならない苦しみと命を落とした仲間達の想いを引き継いでいかなければならない責任もあるが、その分、同じ志を持つ人間とのたくさんの出会いがある。
死とは、永遠の別れ。二度と会うことは無い。話すこともできない。意思を通じ合わせることもできない。最期を『幸せだ』と感じその生涯を終えるか、ただ残酷な死を遂げるか……それは大きな違いだ。
「……でも、思うんです。泣いてばかりじゃダメだって……皆の死を惜しんで涙を流し続けるくらいなら、私は、皆がここまで繋げてきたものを未来に生かしていきたいって……」
仲間の死を惜しむことも大切なこと。でも、そこで立ち止まっていてはいけない。前に進まなければ、少しでも早く……一歩でも──
「……私が兵士になった理由は、『自分が出来ることを見つけるため』です」