Vergiss nicht zu lacheln―進撃の巨人
第6章 答え
「リヴァイ兵長……?」
「……」
結局邪魔をしてしまったと心の中で舌打ちを打つ。本人達は気にしていないように見えるが、あの空間は、雰囲気は、とても居心地のよいもので壊したく無いと思ったから。
「兵長、こんな所でどうしたんですか?」
「それはこっちの台詞だ。こんな時間に外を歩き回るんじゃねぇ」
リヴァイに咎められ、エミリはそこで規律を乱してしまったことに気づく。
「す、すみません……!! 目が覚めたもので……その、つい……」
しょんぼりと眉を下げて謝るエミリに、リヴァイは一つ溜息を吐く。
本来ならここでしっかりと注意すべきなのだろうが、何故だかそんな気分にもなれない。
(まあ、特に問題も起こしてねぇしな……)
以前話をした時に頭を撫でてやったりと、何故こんなにもエミリに甘いのだろうか。自分でもよくわからなかった。
「……兵長?」
「あまり一人で出歩くな。男に襲われるとも限らねぇだろ」
「へ」
怒られると思っていたはずが、逆に身の心配をされ思わず気の抜けた声を出してしまい、すぐに両手で口を塞ぐ。
「兵舎に戻れ」
「あ、はい……」
「……どうかしたのか」
歯切れの悪い返事に、リヴァイは数歩ほど歩き再度エミリの方へ振り返る。
「いえ、その……もう少しだけ、ここに……」
「馬鹿か。危ねぇって言ってんだろ」
「眠れなくて、ですね……」
「……」
頬を人差し指で掻きながら、申し訳なさそうに目を逸らすエミリに深い溜息を吐いたリヴァイは、再び足を動かし口を開いた。
「来い」
「え」
「執務室に来いと言っている。こんな夜明けに一人で外にいられるよりはマシだ」
「…………えぇ!?」
兵士長からの予想外の言葉に、呆気に取られたエミリは思い切り声を上げた。
「うるせぇな……」
勿論、そのどデカイ声にリヴァイは顔を歪ませる。
「そ、そんな……悪いですよ! 兵長忙しそうなのに! なら、部屋に戻ります」
「眠れないんだろ。無理して寝る必要はねぇ」
「け、けど……」
「いいからお前は黙って着いて来い」
「……あ、はい」
リヴァイからのまさかのお誘いに、エミリは渋々といった様子でリノと共にリヴァイの後を追った。