Vergiss nicht zu lacheln―進撃の巨人
第6章 答え
近くの樹に背中を預けていたリヴァイは、エミリの話に耳を傾けていた。
(……変わった奴だ)
それは、リヴァイが初めてエミリと話した時に思ったことだ。けれど悪い意味ではなく、褒め言葉だ。
リノと話を続けるエミリを見る。
『眩しい』と思った。
真っ直ぐと揺るぎない意志を持った瞳に、太陽のような温かい笑顔は、とても眩しかった。
壁外調査を終えた後は、仲間を失った悲しみに兵士達は皆、暗い表情をしている。纏っている空気も重たいものばかりで、リヴァイからして見れば良い気はしないがそれは仕方の無いことだった。
リヴァイ自身も初めて壁外調査から帰還した後は、同じように気が休まらない日々を過ごしていたから。
心を許し合える、大切な仲間を失った悲しみで……。
兵士長に任命されてからもそれは変わらない。
ただ、一つだけ変わったとすれば、感情を表に出さないということ。そうしなければ、部下達に示しがつかないから。
時には、いつまでも仲間の死を悔いている部下達に切り替えろと説教する時もあった。
たとえ冷酷だと、厳格な人間だと言われても──
「ふふ、リノってば擽ったいよ」
リノとじゃれ合うエミリの表情を見ていると、何故だか分からないが酷く心が落ち着いた。
同時に、改めてリノがエミリに心を許した理由が理解できた。
エミリ達の邪魔をしたくないと思ったリヴァイは、執務室へ戻ろうと足を動かした。が、
パキッ
枝が割れる音がした。
踏み出した右足の下には少し細めの枝が曲がっている。どうやら足を動かした際、踏んでしまったようだ。
「……え」
勿論、その音はハッキリとエミリとリノの耳にも届いていた。
音の聞こえた方へ歩み寄り、ひょっこりと顔を出す。
樹の後ろに立っていたリヴァイと目が合った。